母は、会うたびに『そのシミはどうしたの?』と顔を指差すのです。
『ファンデーションと口紅だけは塗りなさい!』と、
お化粧すると皮膚呼吸ができない感じで、息苦しくてきらいな私を指差すのです。
以前は月に1〜2回会うだけだったから、スルーできたのですが、
いま毎日会うので、そしてそのたびに言われるとキレてしまい、
『ほっといて!2度と言わないで!』
次の日封書に入った手紙を渡されました。
『年取ってシミだらけの黒いかおになってしまうのは、親としてとても耐えられません。
どうかお化粧をしてください。』
という内容が便箋三枚に書かれていました。
母も高齢で、生きているうちにこれだけは、この子に言い聞かせなければと、
必死なのが伝わりました。
その日から私はファンデーションと口紅をつけています。
まだ1週間ですが、母はとてもほっとしたようで、
満足そうに私をながめています。
参りました、母上。